3日目 十勝岳周辺の林道群
チカベツ林道・ペンナイ林道・パンケニコロベツ林道他


 昨日のうちに帯広の北にある鹿追まで移動して車中泊していた。今日は十勝岳付近に多数
存在するロングダート林道を回るつもりである。
 「道の駅しかおい」を出発したのは早朝4時半前だが、すでに朝日は顔を出している。北海道
の夜明けは関東よりだいぶ早く、30分近く差があるように思う。


「道の駅しかおい」出発 4時半前でももう朝日が

 同じように車で北海道を回っているのだろう、本州ナンバーも何台か車中泊しているようだ
が、それらを横目に先に出発である。
 北海道ならではのまっすぐ伸びた直線路を走り、まずは然別湖を目指す。


朝の直線道路を一路然別湖向けて進む

 然別湖は十勝平野の北、標高約800メートルにある天然の湖。湖畔には然別湖畔温泉が
ある。立派なホテルも建つが、比較的静かな印象の湖だ。西側の畔を道道85号が通っている
が、木々が遮るので湖の全景が見えるポイントはあまりない。

 
静かにたたずむ然別湖 なかなか立派なホテルが並ぶ然別湖畔温泉を抜けてさらに進む

 然別湖の先にある山田温泉から、「町道然別峡峰越線」が分岐する。温泉もある然別峡へと
延び、道道1088号へまでを結ぶ道である。もともとはダート林道だったと思われるこの道を、
北海道林道巡り最初の道に選んだ。…のだが、なんとゲート閉鎖である。「道路決壊」と看板
が出ていて、このエリアも自然災害が多発しているのかと不安になった。先が思いやられるス
タートだ。


この旅最初のダート、町道然別峡峰越線は、道路決壊で閉鎖
果たしてこれから先どれだけ通行止めを食らうのかと不安…

 さっき登ってきた然別湖までの道を、今度は反対に十勝平野向けて下りていく。目の前には
広大な眺めが広がる。さっそく、これぞ北海道という景色を楽しむ。


道道85号を下ると、目の前に十勝平野のパノラマが広がる

 今度は道道1088号を北上。さっきの町道然別峡峰越線を通行できれば無駄なく林道をつ
ないで走れたのだが、少々遠回りとなった。地図上であれば「少々」でも、広大な北海道では数
10キロとなり、実際は「結構な無駄足」となる。ツーリングマップルも北海道版だけはほかのエ
リアと縮尺が異なるのである。

 右にトウマベツ林道の分岐を見つける。予定には全く入っていなかったが、カーナビにも表示
されている道なのでちょっと興味を持った。どうやらさっきの然別湖近くまでを結ぶ道で、こんな
ことだったらもっと早く調べておけばよかった。だが、少し入ったところでゲート閉鎖。ここもや
はり通行不可能だったのである。

 
道道1088から分岐するトウマベツ林道も閉鎖 一般車が通れることは滅多になさそうだ

 気を取り直して予定の林道を目指す。標識などがいっさいなく、入口を発見するのに少々手
間取ったが、それらしい道を見つけて進入する。第二然別本流林道である。


道道1088号にある、第二然別本流林道の分岐

 ようやくこの旅最初の林道にありついた。さっそく走行開始である。眺望はほとんどないのが
残念だが、北海道の山を走っているということで、感激もひとしおだ。ただ、北海道の山はほと
んどがヒグマの生息地域だと思って間違いはないから、かなりの恐怖感が伴う。2年前のヒグ
マとの遭遇も思い出し、十分注意するように改めて心がける。久々に出番が来た、なまくらモノ
の鉈も、しっかり腰に装着して、格好だけは準備万端である。


深い森の中を行く 密林と茂った草で、ヒグマが恐い…

 路面は大変よく整備されていて、コーナー以外は舗装路と変わりなく走れるほどだ。景色が
見えないこと、そしてむやみに降りるとヒグマと出会いそうで、ほとんど止まることなく進んだの
で、結構なハイペースである。
 目の前に何かいるなと思ったら、エゾシカの親子だった。観光地にいるエゾシカとは違い、人
の姿を見慣れていないのか、ちょっと近づいたら森の中へと逃げていった。


林道上でエゾシカの親子がこちらの様子をうかがっていた

 この林道では珍しい、ちょっとした展望区間を通過する。絶景とはいかないが、開放感のある
眺めにほっとした。

 
第二然別本流林道では貴重な展望区間 ちょっとした眺めが楽しめる

 どんどん下って、オソウシ林道へと突き当たった。こちら側には林道標識が設置されており、
今走ってきたのが間違いなく第二然別本流林道だということが確認できた。

 
オソウシ林道に合流 ここには第二然別本流林道の案内板あり

 左折すればさっきの道道1088号方面へ戻れるが、ここは右に進みさらに林道の奥深くへと
進む。
 この林道の奥にはオソウシ温泉という小さな温泉施設がある。途中の分岐にも案内がある
から、間違わずに進めるはずだ。が、その案内を頼りすぎて、ルートミスをしてしまうのだった。

 少し進んだところに三叉路が現れた。左に分かれる道と直進する道。分岐に「オソウシ林道」
標識と一緒に「オソウシ温泉方面10.2q」の標識もある。すぐそばには「鹿追オソウシ林道」
の標識もあるが、たぶん同じ林道のことだろう。で、直進する道を進んだ。

  
 
オソウシ林道の途中で現れた分岐 ここは直進したが…

 相変わらずのフラットダートを、気分良く進んでいく。この路面を見る限り、これが本線で間違
いないと思った。


山奥へとどんどん登っていく

 が、突然道がなくなった。いや、それらしい形跡はあるのだが、すでに路面と川が一緒になっ
て、岩ゴロゴロのところを水が流れている。これを越えれば再び林道の続きかと思ったが、そ
の先は獣道となっていた。やはりここは本線ではなかったのである。

  
 
道路が川に変わり、路面が消失 無理矢理進んでみたが、身動きとれなくなるのは嫌なので断念
ここはやはり支線の「鹿追オソウシ林道」だったようだ

 結局さっきの分岐まで引き返すこととなった。改めて標識を見れば、「オソウシ温泉方面」の
案内には、色あせた左向きの矢印が書かれているのだった。

 
さっきの分岐まで引き返してくると、オソウシ温泉方面の標識には色あせた左の矢印が…

 改めて本線の続きを進む。しばらく山中を登り続けた道は、急に視界が開けた一帯に出た。
おそらく植林を伐採してしばらく放置されている場所なのだろう。青空が広がり、北海道らしい
白い雲が浮かんでいる。考えてみれば本州は今も梅雨のまっただ中、一足早く夏空を拝んで
得した気分である。


オソウシ林道の途中で、広い場所に飛び出た
青い空と白い雲、北海道らしい眺めに出会う

 そしてまた林道分岐。右方向が「オソウシ温泉」とあるから、どうやらそちらに曲がるのが本
線と思われる。「オソウシサラウンナイ林道」という林道標識もあり、ここからは林道名が変わ
るようだ。道路脇に2台の車が駐車してあって、はたしてどこへ行っているのだろうとちょっと気
になる。ここには北海道ならではの「熊が出没しています」という注意看板も設置されていた。
改めて自分はヒグマの生息エリアにいるんだと再認識した。
 その時突然道路脇の茂みがガサガサと音を立てる。もしやと身構えたが、出てきたのはさっ
きの駐車車両のドライバーたち。どうやら山菜かタケノコでも採っているようだ。

  
 
また林道の三叉路 直進方向から右へと抜けるのがオソウシサラウンナイ林道らしい
そのオソウシサラウンナイ林道を、右折のオソウシ温泉方向へと進む

 オソウシ温泉の標識に従い、再び進み始める。視界が開けたなだらかな登り道を行く。これ
また北海道らしい空を見ながらの林道ドライブだ。


オソウシサラウンナイ林道も青空の下
しかし驚くほどのことではない 北海道の林道はみんなこうなのだ

 道は一転、下りへと変わった。山々を見渡しながら、どんどん下る。もうオソウシサラウンナイ
林道も終盤、地図を見ればオソウシ温泉に近づいたようだ。


大自然を眺めながら下ってゆく

 再び森の中を走るようになると、やがて発電所の脇に出て、その先でまた三叉路。左折がオ
ソウシ温泉を通って十勝平野へと降りるルート、右折するとそれより上流に出て、秘湯マニア
にはよく知られるトムラウシ温泉方面へと出られるルートだ。ここは今後の林道巡りを考えて、
右折のコースのほうを選ぶ。林道標識の類は見つからなかったが、どうやらこの道はイロネウ
シ林道というようだ。

 
オソウシ温泉手前でまた三叉路出現
写真手前方向がオソウシ温泉を経て新得・鹿追方面へ行く道、
奥が東大雪湖脇を通ってトムラウシ温泉方面へのイロネウシ林道

 展望のないダートをしばらく走り、東大雪湖のそばで道道718号へと飛び出た。トムラウシ温
泉・ヌプントムラウシ温泉へのアクセス路となっている道道で、山中だがそこそこの交通量があ
る。とりあえずこの旅最初のダート林道走行はここで終わり。


東大雪湖そばにあるイロネウシ林道出口


 道道718号をトムラウシ方向へと進むと、すぐに東大雪湖にかかる橋を渡る。その先から次
に走る予定のバンケキナウシ林道が分岐している。全長13キロほどのダートだが、その先さ
らに林道をつないで走れるという魅力的なエリアだ。十勝岳・トムラウシ周辺のこの一帯は、全
長20キロ前後のダートがいくつも通っている、林道天国なのである。
 が、パンケキナウシ林道は開放こそされていたものの、実質通行不可能であった。

この先(約7.6q地点) 橋梁損傷のため通りぬけできません

 行けるところまで行ってみようかとも考えたが、無駄足になることがわかっているのだからや
めておいた方が得策である。次のプランを練り直すことにした。

 
バンケキナウシ林道は残念ながら通り抜け不可

 道道718号をさらに進んでいく。後ろからエスクードが1台、結構な勢いで追いかけてきた。
こちらはほぼ定速走行していたが、カーブだとこっちが速く、直線だと逆にあちらが速い。とり
あえず迷惑にはなっていないようなので、道を譲ることはせずにそのまま走った。
 トムラウシ温泉へと道とヌプントムラウシ温泉への道が分岐する地点付近に、シートカチ林道
の入口がある。このエリアを代表する林道のひとつだ。もちろんここを曲がったのだが、なんと
後続のエスクードまでついてきた。林道まで追い立てられて走る気はない。入口で停車して先
に行っていただく。エスクードには「林野庁」の文字があり、森林を巡回している方のようであ
る。


シートカチ林道分岐点 ロングダート群への入口だ
舗装の道は道道718号、直進するとすぐダートとなり
トムラウシ温泉まで続いている

 いよいよシートカチ林道へと突入。気分良くスタートしたのだが、すぐにさっきのエスクードほ
か数台が立ち往生しているのが見えた。なんと工事中である。作業員が歩いてきたので訪ね
ると、10分ちょっと待てば通れるようだ。しかしどうも状況がはっきりしない。迷惑なら引き返す
がと話しかけたら、「そうしてもらえると…」という返事が返ってきた。遊びのために面倒をかけ
るのはよくない。前にも走ったし、ここは無理して通行するのはやめておいた。


シートカチ林道は工事中 邪魔するのは悪いので引き返した

 シートカチ林道を簡単にあきらめたのにはわけがある。ロングダートが密集するこのエリアに
は、シートカチ林道にこだわらずともあちこちに入口があるのだ。特にさっき道道を走っている
最中に見つけた、「チカベツ林道」というのが気になる。
 チカベツ林道入口で停車。さっき通行を断念したパンケキナウシ林道の迂回路に当たるルー
トのようで、カーナビにもしっかり道路が表示されている。ツーリングマップルに書かれていない
し、ネット上でもそんなに公開されていない物件である。これは走っておかなくては。

 
チカベツ林道起点 道道718号からチカベツ川沿いに登る道である

 スタート直後は勾配のほとんどない道を行く。深い森の中で、緑がなかなか美しい。大型車両
が出入りしているらしく、路面はフラットだが道幅いっぱいにタイヤの跡が見える。


しばらくは森の中の平坦路

 起点から1qも走らずに三叉路が現れる。本線は直進だが、右折の道が気になった。チカベ
ツ集落付近を通り、道道718号へと戻る道なのだが、さっき道道側の分岐に「NHKロケ地」と
かいう案内板があるのに気がついたのだ。なんのロケをしたかはわからないが、ちょっと立ち
寄ってみよう。一旦チカベツ林道をそれて、寄り道する。


三叉路 直進がチカベツ林道、右折がチカベツ集落方向
右にあると思われるロケ地を見に寄り道する

 チカベツへの道は、なかなかの絶景だった。森を抜けると牧草地などが広がり、視界が開け
た。前方には7月の終わりだというのに雪が残るトムラウシ山の姿が望める。


チカベツ集落への道 草原を貫くダートである
右前方にそびえるのが、日本100名山にもなっているトムラウシ山(2,141m)

 道路脇にわらぶき屋根のような廃屋が集まっている。北海道の奥地でわらぶき屋根とは珍し
いなと思ったら、これがロケ地の跡だった。町有地を提供した関係で、今も町がセットを保存し
て維持しており、観光用に歩道なども整備されている。それほど積極的に宣伝していないよう
だから、訪れる人も多くはなさそうだが、ちょうど二人の中年男性が見学の最中だった。撮影さ
れたのは昨年秋NHKで放送された大型ドラマ「ハルとナツ・届かなかった手紙」。私は全く見た
こともないのだが、放送を見た人ならばその様子が思い出されるのではないだろうか。

  
 
NHK放送80周年を記念して放送されたドラマ「ハルとナツ・届かなかった手紙」ロケ地
今も地元新得町によって保存されているが、
豪雪のこの地でわらぶき屋根の建物がいつまで耐えられるのか、ちょっと心配だ

 ふたたびチカベツ林道の続きを走る。高い山へと這い上がるような道ではないので、緩い勾
配を少しずつ登っていく感じだ。周囲は相変わらずの深い森で、ちょっと恐い。この辺りは広大
な樹海が広がっていて、ヒグマの多数生息する場所である。写真を撮るために時々車から降り
るが、どうしても小走りになる。


チカベツ林道をさらに山中へと進む

 しばらく進むと、幾分視界が得られるようになる。この辺りがチカベツ林道の最高所。眺望は
ほとんどないが、やはり暗い森の中よりは恐怖感は減少する。久々にじっくりアングルを定め
て撮影できた。


もうすぐチカベツ林道最高所 多少開放感のある区間に入る

 峠の三差路に出た。直進すると、さっき通り抜け不能と案内板が出ていたパンケキナウシ林
道だが、こちら側には特に表示はない。もしかしたら通れたのか?目指すルートは右折。標識
類は設置されていないが、ここから林道名が変わり、「ペンナイ林道」となるようだ。


パンケキナウシ林道が分岐する三叉路
写真奥が走ってきたチカベツ林道、手前がバンケキナウシ林道
左方向がこれから進むペンナイ林道

 ペンナイ林道に入ると、道は下り坂中心である。ペンケナイ川の流れる沢沿いに下り、道道7
18号屈足付近へと抜ける道だ。なぜか川の名前と林道名が微妙に違うのが不思議。
 再び視界が遮られ、道路の左右は草木が茂る。ところどころにヒグマの糞らしきものが転が
っていて、気味悪い。結構なロングダートなのだが、特に見るべきものもなく、車から降りられ
る状態ではないから写真も撮れずで、止まることもなくハイペースでどんどん下っていく。


展望は得られないペンナイ林道
草木が茂って今にもヒグマが出てきそうだ

 道はまた森の中へと入っていく。始めは見えなかったペンケナイ川が林道脇を流れるように
なると、出口も近い。


ペンケナイ川がすぐ横を流れる もうすぐ出口

 道道718号に戻って、ペンナイ林道も完走。あまり印象に残らない眺めだったが、ツーリング
マップルにも載っていない道を走破したことで、まずまず満足である。

 
道道718号に出ると、ペンナイ林道出口 こちらには標識が出ている


 まだまだこの地域の林道探検は続く。道道718号を屈足方向へとしばらく進む。変電所の脇
を入ると、そこにパンケニコロベツ林道の起点がある。パンケニコロ川沿いに北上し、奥十勝
峠までを結ぶダートである。この林道、過去2回走行を試みているが、いずれも通行止めに遭
い走破できていない。今日は走れるといいのだが。
 起点脇には空き家が建っている。以前ここの飼い犬に吠えられた思い出があり、前回来たと
きまでは人が住んでいたような気がする。今では廃墟となった家を見ると、なんだかとても寂し
い眺めに見えた。

 
パンケニコロベツ林道起点 後ろの家は廃墟になっていた 今回は走破できるか

 さっそくパンケニコロベツ林道へと踏み入れる。しばらく走るとゲートがあるのだが、もしこれ
が閉じていたら今回も走れないことになる。「二度あることは三度ある」にならないことを祈りつ
つ進む。だが、いらぬ心配であった。過去2回閉鎖をくらったゲートは、今日は開放されてい
る。「三度目の正直」で、ようやく走行可能である。


森の奥にあるパンケニコロベツ林道のゲート
今回は開放、3度目にしてようやく走ることができる

 パンケニコロ川の流れに沿って、少しずつ登っていく。辺りは深い森林で、眺めは全く期待で
きないのだが、緑眩しいさわやかなドライブである。


パンケニコロベツ林道を行く 眺めはないが緑豊か

 路面はおおむねフラット、直線なら40キロほどのスピードを出せる場所も多い。それほどき
つくない登り勾配が続く。起点から終点の奥十勝峠までは約30qと、かなりのロングダートな
のだが、特に変わった景色もないから淡々と走るだけだ。そんな中、道路脇のパンケニコロ川
を覗いたら、渓流が時折滝となって落ちていることに気づいた。人工の林道は均一な勾配で作
られているのに対し、自然の渓流は時に緩やかに、時に大きな落差となって流れているのだっ
た。


パンケニコロ川 時折流れは滝の姿に変わる

 道路脇にちょっとした自然の花畑ができていた。白い花がけなげに咲いている。菊の一種と
思われるこの花、ネットで調べてみたものの正体がはっきりしない。フランスギクというのによく
似てはいるが、ちょっと違うし…植物は難しい。

 
林道脇を白い花が彩る

 起点から1時間半ほどで、終点の奥十勝峠へ到着。今走ってきたパンケニコロベツ林道、ペ
ンケニコロベツ林道、そしてこの先さらに山中を走ってトムラウシ方面へと抜けるシートカチ林
道が集まる三叉路となっていて、このエリアを走る林道ファンならたいてい訪れることになる、
ちょっと知られた場所なのである。

 
奥十勝峠 写真左方向がパンケニコロベツ林道、手前がペンケニコロベツ林道、右がシートカチ林道
展望はないが、十勝岳東側エリアの林道群の要衝といえる地点としてよく知られている

 ここからはシートカチ林道へと進む。さっき工事箇所に出合い引き返した道だが、今度はこち
ら側から行けるところまで行ってみようと思う。
 シートカチ林道はこのエリアの林道の中でももっとも景観に富んだ道。奥十勝峠を出てすぐ
に、前方に見事な十勝岳連峰の姿が浮かび上がった。日本100名山の一つとして知られる十
勝岳だが、ここまでやってくる人は多くはないから、この景色を知る人は限られる。林道を走っ
て初めて見ることができる絶景なのだ。


シートカチ林道からは十勝岳連峰を望める
前方奥に見えるのが、日本100名山の十勝岳
その左手前にあるのは下ホロカメットク山のようだ

 気分良く走っていたら、前方の路上に何かが置いてあるのが見えた。カラーコーンのようなそ
の物体には、「作業中通行止」と書かれており、営林作業の最中だと思われる。どうやら今日
はシートカチ林道へ立ち入るのは不可能のようだ。以前も走っている道だし、ここは潔く引き返
すことにしよう。


残念ながら作業で通行止
こちらからもシートカチ林道には入れそうにない

 こうなると進路は必然的に決まった。奥十勝峠まで引き返し、今度はペンケニコロベツ林道
へと左折する。

 ペンケニコロベツ林道はその名からわかるとおり、先ほどのパンケニコロベツ林道と対をな
す林道である。過去のレポートでも説明したが、アイヌ語で「ペンケ」は上、「パンケ」は下を意
味する。「ニコロ」は木々が茂る森林を表し、「ベツ」は川を示す。ペンケニコロベツ林道は「上
の森の川の林道」、パンケニコロベツ林道は「下の森の川の林道」と訳することができるわけ
だ。パンケニコロベツ林道と平行するように下り、道道718号まで戻ることができる。

 路面は超フラットダートの区間がほとんどで大変走りやすい。パンケニコロベツ林道・ペンケ
ニコロベツ林道は、毎年秋に開催されている「ラリージャパン」のSS(スペシャルステージ=タイ
ムトライアル区間)として使用されているから、整備が行き届いているのも頷ける。こんな山奥
の寂しい道だが、ラリー開催時だけは世界中から一流ドライバーが集まり、チューンされたマ
シンが突っ走って熱い戦いを繰り広げるのだ。


快適なフラットダートが続くペンケニコロベツ林道
日本を代表する国際ラリー「ラリージャパン」でも使用される道だ

 路面に枯れ枝のようなものが落ちていたので、ハンドル操作で避ける。よくよく見れば、それ
は枝ではないようだ。なんと動物の骨である。
 北海道の大自然に生息する動物の代表格といえば、もちろんヒグマ。雑食性で、普段は木の
実などを食べることが多いというが、エゾシカの死骸も貴重な食料なのだという。林道は動物に
とっても歩きやすい場所、死骸を林道上まで持ってきて食べることも多いようだ。路上にクマの
糞や動物の骨があるということは、この周辺にヒグマがいると思って間違いない。ラリーが行わ
れる道とはいえ、ここは紛れもなく北海道の山奥なのである。


路上に落ちている動物の脚の骨
ヒグマが生息することを裏付ける物的証拠である

 しばし走ると、今度は現代の文明の利器が視界に入ってきた。真新しい塗装の林野庁の巡
回車と、作業用の建設機械である。路面整備のため、2台で定期巡回しているものと思われ
る。邪魔してはいけないからと距離を取ってゆっくりついていったら、道を譲ってくれた。林業関
係の方々は大抵は親切で、遊びで走っているこちらとしては恐縮してしまう。


林野庁の車と路面整備用のドーザ
定期的なメンテナンスのおかげで、我々も林道走行を楽しめる

 少し開けた平地が右側に見えてくると、もうすぐ終点。こちらも30q近いロングダートで、北
海道はスケールが大きいなとつくづく実感する。


林道脇に平地や牧草地が見えてくると、もう終点は近い

 久々にアスファルト路面の道路にぶつかって終点。道道718号、ちょうどペンナイ林道・パン
ケニコロベツ林道それぞれの起点の中間辺りである。

 
また道道718号に戻ってきた これでペンケニコロベツ林道も完走

 このホームページは林道ガイドではなく、あくまで林道旅行記として作っているので、いつも詳
しい案内は載せてこなかった。しかしながら今回は制作している自分が読み返しても混乱する
ほど複雑な行程となってしまったので、位置関係を説明する意味で略地図を掲載しておく。こ
れから北海道を旅してこのエリアを走ってみようという方に役立てていただければ幸いである。

十勝岳東側エリアの林道
(略地図なので縮尺などは省略しています)

赤線…国道 緑線…主要道道 黄線…一般道道 茶線…ダート


 少し早いが、ここで今日の林道走行は終わり。当初の計画通り、明日に備えて旭川までの移
動を始める。

 北海道観光の最近の目玉のひとつが、富良野・美瑛。今はちょうど花のシーズン、大勢の観
光客はラベンダー畑に押し寄せているはずだ。ラベンダーといえば中富良野町の「ファーム富
田」。前に数回立ち寄ったことはあるが、確かに素晴らしい場所である。しかし男一人で山を巡
っている自分が、観光客に混じってラベンダー見学するのはいかがなものか。他人からすれば
どうでもいいことだろうが、今回林道巡りという硬派な旅を目的にやってきた自分には、一般観
光客に成り下がることがどうも納得できないのだ。ファミリーやカップルに混じって、男一人で花
畑見物とは、なんとも情けない絵面ではないか。反面、北海道の誇る情景とも言えるラベンダ
ーを無視して帰るのも、これまた間違えている気もする。さて、どうしよう。
 …で、人目を気にしないでラベンダー鑑賞を堪能できる場所へ立ち寄ることにした。南富良
野町、かなやま湖の畔にある「かなやま湖湖畔園地(鹿越園地)」である。そこそこ広いラベンダ
ー畑を持っているのに、あまり知られていないので、訪れる人は極めて少ないのだ。画像を見
ればわかるだろうが、このゆとりである。おかげで人目を気にせずラベンダー鑑賞ができた。
 混雑を避けたい方にはおすすめのラベンダースポット。ただし、普通に旅行する人にとって
は、誰もいない観光地というのはかなり寂しいはずで、逆にここを見たらファーム富田のような
賑やかな観光地に行きたくなりそう。

  
 
「かなやま湖湖畔園地」 静かにラベンダー鑑賞をしたい人には絶好の場所
ご覧のように他人に邪魔されずに写真撮影ができるほど(…というか、本当に誰もいなかった)
余談だが、ここの駐車場で堂々とライトのバルブ交換作業を実施(爆)


 旭川市のお隣当麻町の「道の駅とうま」に泊まることにした。本当ならレトルトで安くあげたい
ところなのだが、少し時間が遅いし疲れたから、地元コンビニのセイコーマートで弁当を調達。
今日までは楽したが、これからは贅沢は避けようと思う。


4日目 旭川周辺の林道〜名寄周辺の林道 へ


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